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『パイオニア』に思い出して欲しい、『Pioneer』の夢とロマン。

目黒通りを走り、山手通・大鳥居交差点を過ぎ権之助坂を上る。二手に分かれた坂道、右手に見える白にブルーがかった窓が映える綺麗なビル、最上部の赤いロゴ・サインが目を引く。 Pioneer

数十年前、自車へのオーディオにパイオニアを憧れつつも高嶺の花、そんな免許を取得した頃には、このビル前を通る時、決まって運転席から憧れ目線で見上げたものだ。今思えば、混雑しやすい駅横信号の為か、ちょうど前に止ることがしばしばあった。まさに「見上げる」位置に、パイオニアビルは白く輝いていた。

どこへ行くのも、走るのも、楽しいとき。窓を開け、風を感じ、お気に入りの音を流しながらドライブする、そんな楽しみを広げてくれていた、Pioneerだ。

昨今、そのパイオニアが何かと再建を模索か、と伝わってくる。芳しくない業績回復の中、プラズマテレビや家庭用AV(オーディオ・ビジュアル)からの撤退、カーナビやカーオーディオ等への集中も振るわず、OEMも今一つと、カーエレクトロニクス一本絞りも中々功を奏さず、そこに来ての欧州委員会からのパンチは痛い。EU競走法違反の疑いとしての調査結果、課徴金13億円による特損計上との事。懸命に、本当に一生懸命に山谷を乗り越えるべくの頑張りがなかなか生きて来ていないようだ。パイオニアと云えば、最高のスピーカーを引っ提げ、鮮烈に世に登場した、輝くブランドだ。若きありし日に憧れを抱いていた個人的な思いとして、是非とも難関辛苦を突破して欲しい。

企業努力がどこか、空回りなのだろうか。カーオーディオも、カーナビゲーションも、刻々とスマートフォンの応用が増えている。オーディオに求める機能も、ブルートゥースで飛ばす音源を良音質で再生してくれさえすればいい、という向きもあり、その要求度が車メーカーでもカーオーディオへの重要性比重に影響し、脱・過高級オーディオともなり、関連してOEMにも影響を与えているだろう。リアルタイムで正確なロード・ナビゲーションもGoogleで充分、という向きさえあり、実際に街でよく見かけるようになってきている。

しかし、こういった社会動向は、ゆうに予測できた筈であり、見通せたであろうに、何故か。全くの私見だが、パイオニア全体がまるで深い迷いの森に入り込んでしまった様に思える。まさに、五里霧中。どれほど優秀な選手が揃っていても、個々に能力を発揮していても、お互いが霧で見えなければパスもアシストもできないだろうし、まして、目指すゴールが皆バラバラとなってしまうだろう。経営、管理層、営業、企画、開発や技術、生産製造といった「各ポジション」が、どこか不統一か、和合出来きれていないのではないだろうか。

古き善き話も参考になる。「あなた方が造るビールが美味しくないから売れないんだ。」という営業サイドと、「我々が一生懸命に作った美味しいビールを売れないのはあなた方の営業努力が足りない。」という技術製造の側。その対立を紐解き、対話し、理解と協力し合い始めたことによって誕生したのが「スーパードライ」であるという。アサヒビールの企業生命を賭けた挑戦だ。各々が互いに、プライドもエゴも保身さえもかなぐり捨て、必死の様子が想像できる。精神、心理としても、さぞかし苦境続きではなかったかと察する。しかし、思うにそこには、消費者(お客様)への喜びを提供したい真剣な心と、製品と技術と社を愛する魂があったのだろう。

当事者でもなく、外野から勝手なことは言えないが、きっとパイオニア社にもその熱情、心と魂が在る筈だ。いかなる苦境でも、その根底にある立志心と克己心で全体が一つになることが、何よりも最重要な事、と思う。仮に今後、他社との提携となったとしても、その気心と魂次第で、良き提携となり融合していくだろうと確信する。そしてまた、その時に、社員方々一人一人の自負心も高めていけるのではないだろうか。

かつて後楽園球場では、王・長嶋の名の横には「パイオニア」が輝き、テレビでは、キャッチャー後方からの画面に常にパイオニアが輝いていた。ブランドの輝きはスピーカーに留まらず、レーザーディスクで超純良な画像を齎せてくれたり、パーソナル無線で車乗りを歓喜させてくれた。現代に至っても、カロッツェリアのハイブランドイメージは、高品位かつ躍動性あふれるカッコよさを与えてくれている。

パイオニアにはいつの時代も、夢を感じさせる気概か、魂か、浪漫(ロマン)があった。もしかしたら、今、パイオニアは、夢とロマンのパイオニアである事を、忘れてしまっているのかもしれない。知識では知っていて理解していても、心の根底に漲る魂として忘れてしまっているのかもしれない。

近年、若い人達を中心とした車離れを耳にする。どうやら「車=移動手段」との理由も。車には、ただ走らせる楽しみがある。ドライブの楽しさ。お気に入りの音を聞き、流す気持ちよさ。この喜びをあらためて世に伝え広げていくリードオフマンとして、『Pioneer』は輝き続けて欲しい。

 

 

 

 

 

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