近年、我々が日頃携わる、企業や団体向けの研修業界や、個人に向けての活性研修の場のみならず、資格取得や趣味、習い事など、実に多様な分野で「女性講師」の活躍と存在感が増しているように思う。
しかも、単に“女性だから柔らかい”という単純な話ではない。多くの『女性講師』のその活躍ぶりには、卓越した「分かりやすさ」と「空気づくり」の妙があり、さらには「受講者を前進させる力」が極めて高いレベルで融合しているケースが多い。
先日、ある女性講師が登壇された講習現場を拝見した際にも、そのことを強く感じた。教育と学習の現場では非常に大切なことなので、一筆啓上したい。
普段着のような話と関わり
講義テーマはここでは伏せるが、初心者向けの知識と技術の講習である。
参加者のほとんどがその分野の未経験者。 専門用語もほぼ初耳。 覚えていくルールも結構複雑だ。一歩間違えてしまうと、「難しいな」 「分からない」 「ついていけるかな・・・」 といった気持ちになりかねない内容である。
講義の冒頭、いきなり専門論には入らず、まずは「前回のおさらい」から入る。
このレビューステップは至極当然なのだが、その説明が実に巧みで、やわらかく進めていく。
専門用語をそのまま投げない。
「ラッキー、はい!」
「これ、あと一つだよね!」
「なんだか呪文みたいな名前ですね!」
…などと、日常感覚へと普段着翻訳していく。
これは、実は高度な技術である。
教える側は、経験者ほど、慣れれば慣れるほど専門用語を無意識に使ってしまう。それはそれで知識や技術の講習なのだから、当たり前ではある。だが初心者にとっては、その“当たり前”こそ最大の壁になってしまう。理解のテンポが、少しづつ、少しづつ、弱まってしまう。そしてその都度、吸収(学習)の意欲を弱めてしまうのだ。
しかし、優秀な講師ほど、初心者の視界に降りていける。すなわち初心者の視点に立ち、初心者の気持ちになってレクチャーできるということ。
意欲を高める「問いかけ」と「目標設定」
さらに印象的なのは、「問いかけ」の使い方だ。
「この手法は、どういう時に使うといいと思います?」
「そうそう、この二つが揃って、あとひとつだなあ、っていう時ですよね!」
この“対話型”の進行が、受講者を単なる聞き手にしない。場に参加させる。意識を動かし、「自分で考えている」という感覚を自然に生み出している。近年の優れた女性講師には、この“受講者参加型”の空気づくりが非常に上手な方が増えてきたように感じる好例だ。
そして、もう一つ感心したのが、「目標設定」の巧さ。
実習に入る直前の“投げかけ”に、無理な背伸び感がない。スムーズに「頑張ってみよう!」という気持ちになる「目標設定」がなされる。その伝え方が実に適切な“やわらか”であり、その“やわらか”が目標への向き合いにスーッと促してくれるのだ。
「今日は、まず1回、それを体験することを目標にしてみましょう!」
言外に、失敗しても全然かまいませんよ、OKですよ! という力づけの空気感をつくりだすこの一言が素晴らしい。
初心者教育において最も気をつけなければいけないのは、“学習=即習得すべき”のペーシングである。「完璧理解」を求めすぎることは、例外的な必要性の有る時を除いて、決して意図してはいけない。それは受講者を萎縮させてしまうし、自信の減退に向かわせてしまいかねない。特に「知識講習」の場合は、である。
「次もできるかも!」を生む、やわらかな心理的安全性
講師の“優れ”はさりげないところが違う。
「まずは、一回やってみようよ」
「まず一度、成功体験を作ろうか」
「今日は半歩進んだね!ここまで出来れば十分」
こうやって“前進可能な小さな目標”を設定する。これにより、受講者の表情が変わってくる。場の空気が軽くなる。「出来るかも」が生まれ、「次もできるかも」が増え、「もっとやってみようかな」へと、気持ち(取組み意識)が育まれていく。
近年活躍する女性講師の特長の一つは、この“心理的安全性”のつくり方の上手さかもしれない。
男性講師の特長の一つといえる、理論と知識の整合性による教示手腕と並んで、それぞれが、各々の個性的魅力といえよう。
近年、ジェンダーの差はなく等しいんだ、といった提唱の本質的な意味は、両者のすべてが全く同じということでなく、それぞれに固有する素晴らしさ(各個性)があって、認められて、発揮され合い、ある種の高いシナジーを生み出す。そのもとにすべてのジェンダーが尊重されるべきという視点が重要なのではないだろうか。
現代の講習現場では、「正しく教える」だけでなく「安心して学べる空気をつくる」能力が、ますます重要になってきている。『心理的安全性を重視する視点』である。MAEKIESでは近年、この視点に加えて「楽しく」であったり「朗らかに」であったり、「おもしろい」という視点と感受も一層重要視している。あらゆる研修にユニーク実習やゲーム的要素をふんだんに盛り込んでいる根拠となっている。
「育みの熱」の源として、安心感と実践を両立させる
知識量だけでは、人はなかなか動かない。
安心感があるから、信頼度が高まり、人は挑戦できる。
「できた!」という喜びを周囲の仲間と分かち合えたり、学びや挑戦による嬉しさを共有してくれることで、お互いの“育みの空気”は熱を高めていくものだ。その担い手である講師は、その場の「育みの熱の源」としてリーダーシップを発揮し、「人と場」を導いていく役。
先日拝見拝聴した、女性講師による講習現場に生まれる「安心感×実践推進の両立」という空気形成は見事であり、現代の、これからの学習の現場でとても大切な在り方と姿勢の構えといえよう。優れた女性講師陣の活躍には、そんな “時代が求める教育力”の進化を感じる。
Z世代を象徴とする風潮の変化や、特に人間関係や就労場面での生き方の変化、シニア世代が増え続く世に於ける社会構造の移り変わりと様々な対応、これら数多くの、しかも多様な課題に向けて、「極めて重要な視座」であり、実に大切な必須要素といえるのではないだろうか。

