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「四角い鉄板を丸く切り抜き余ってもいい」コストより開発を優先した『東京通信工業』の意気と哲学 ~27周年ご挨拶に代えて

「最高に良いものを創ろう!」そんな声が掛け合われる御殿山の職場。戦後、僅かに動き始めて来た昭和の日本、途上から発展へと駆け上がるべく激動していた日々のこと。「儲けよりも先ず質を見つめよう!」と云わんばかりに新たな発明に魂気を注いでいた。1946年の創業から10年ほどが経ち、成長を遂げているにも関わらず、「『ムダができてもいい、良いものを創ろう、良い発明をしよう』と、いつも職場がそんな雰囲気だった。たまに井深さんも混ざってくれたりして。発明の志っていうのかな、それを通し続けていたのが東通工だった。働いていて、とっても楽しかったよ。」と父・前川貢が語っていました。もう、何年も前のことです。

感謝
お陰様で、MAEKIESはこの2月15日、1991年開業以来創業27周年を迎えました。

これまでの全てに於きまして、ご縁を頂戴しておりますクライアント様、ご支援を頂いておりますご関係方々、お取引先様、また、拙社前身時代から様々なご教示下さった多くの先輩方々、共に力を寄せて下さるMAEKIESアソシエイトを始めとしたご協力者様、皆様からのご厚情の賜物と存じております。心より感謝申し述べたいと思います。

人材活性に関する生業を始めてから四半世紀を超え、研修、教育や学びの世界も取り巻く世間の状況と、通信を筆頭にした社会インフラが激変しています。まだまだその変化は勢いを増し、時代と文化の変遷を続いてはいますが、その全ての源である『人』は、いつの時代も心を持ち、思慮し、考え、迷い、感情を震わせて生きており、日々幸せと平和を育み、成長、前進し、夢に向うべく人生を勤しむ事は、不変であろうかと思います。

これからもMAEKIESは、『人』という源、原点に立ち、『人の活性や可能性』という視点のもと、古き良き言に習い新しきを見つめ取り入れながら、より一層邁進して参ります。国内に限らず、世界の多くの組織、個人方々に於ける活性と実践、成就に向けて、僅かでも寄与貢献できれば大変幸甚です。

 

成就への思い

企業研修やコンサルティングなどの相談受けの時に、常に脳裏に浮かぶことの一つに、小生自身の体験(思い出といった方がいいかもしれませんが)があります。

中学3年生の時、父の経営していた中小な会社が倒産したことです。生活の雰囲気がみるみるうちに曇り、夜な夜な父が談判に出掛けるようになり、家族皆でしばらく家を空け、自宅を売り払い、忙しく引っ越しとなり、それは事態がとても急速に動き暗転していくものでした。ある夜、謝罪話のために乗って行った自家用車をその場で持っていかれてしまい、くしゃくしゃな背広で帰宅した父をふすまの隙間から見ていたこともありましたが、その姿は今でも鮮明です。ただ、事業失敗の中ではありますが、個人資産を守ろうとはせずに全ての私財を社員さんへの残給与に充てた姿勢は、(身内の手前みそながら)誇りに思っています。

MAEKIESの発足にこの出来事は直接関係してはいないのですが、奇遇にもこれらの記憶や我が父の経営者姿勢、その良しも悪しきもが留意の片隅にあり、時として参考としています。ゆえにMAEKIES現業で、クライアントさんとの経営相談や企業活性の企画の時には常に、絶対にうまく行って欲しい、上昇、成功して欲しいと心底からの願いとコミットメントの強靭な礎になっております。

東通工と父

父・前川貢が1957年新卒入社し独立までの数年間お世話になったのが、東京通信工業でした。社員番号が3ケタだったという父の語るエピソードには、時折職場で一緒に仕事をさせてもらったという井深さんのお人柄やお考えなどの話や、大賀さんや太刀川さんら大先輩方とのエピソードもあり、その中でも最も印象に残る一つが冒頭のものです。

「例えて云うなら、製作材料である四角い鉄板を丸く円に切って使うと余りが出てしまいコスト無駄となるかもしれないが、それでも質や性能が良いものが出来るならそうすべきだ。」すなわち、コストや利益率は後回し、何よりも、より先進で、より便利で、質と性能こそ重要だという考えで、これこそが利用者にとっての開発、消費者のための技術行使という。

もっとも、重コストであれば商売にも事業維持にも負荷がかかりますから、全く考えなくていい訳ではないでしょう。しかし、先ず、製品の質と性能を最優先にして、良い製品であることを崩さぬ様なコストの再考や材料の検討を図るという姿勢が見受けられます。初めから、儲けや利益のことばかりを優先にした考えでは、きっと本当に良いもの=便利で幸せを生む製品は生み出せないということでしょう。気をつけていないと、売れれば良い商品、となってしまいかねません。結果的に売価が多少嵩んだとしても、本当に良いものであれば、人様の生活に必ず便利と幸せをもたらす、という哲学なのでしょう。

 

真面目ナル技術者ノ技能ヲ最高度ニ発揮セシムベキ
自由豁達ニシテ愉快ナル理想工場ノ建設

 

人や社会に、今迄にない良い文化を生み出す、その事によって幸せをもたらす、これが商売であり、事業であり、経営であり、仕事なのだ、そんな感銘深いメッセージが届く様です。『録音』を身近な生活に導き、トランジスタを初めて国内でつくり、世界に向かって飛翔したSONYが、『人が音楽を持ち歩く生活文化』を始めとする、人類にとっての新たな文化を生み出してきたことの数々を見習うことで、仕事とは? 事業とは? 経営とは? その原点を深く大きく学ぶに至ります。

これまでの27年間、MAEKIESでは大変多くの携わりの機会を頂いてきましたが、ご縁を頂く経営者の方々、ビジネスマンの方々、様々な生活を営む個人の方々、その皆々が魅力的な個性を持たれています。今後も、より一層のその発揮と活性が齎せられるよう、『見習うべきに学び、実践する』で在り続けたく、拙父に聞く『東通工の気概』が今でも心に息づいています。

参考:SONYホームページ『企業情報』

「タイムカプセル」「東京通信工業株式会社設立趣意書」

 

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去る平成30年2月21日早朝、父、前川貢は83年余の人生に幕を閉じ、他界致しました。

生前のご縁と御意を頂きました全ての皆様へ、心より深謝申し上げます。

私事ではございますが、ここに、哀悼の意を捧げさせて頂きたく。

合掌。

 

 

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